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池田敏
アメリカTV・映画ライター。映画誌「キネマ旬報」「SCREEN」やTV誌「TV TARO」に寄稿。最近40歳になりました。


9月27日(土)S4#12「ファイトクラブ」“Knuckle Up”

12blog 【STORY】
 2005年11月18日。名門大学への入学をめざす高校生ジェームズ。父や妹も、彼が奨学金を獲得できるよう応援していた。だが数か月後、ジェームズは町のどこかで血だらけになり、そのまま行方不明とされる。
 そして1年後の現在。ジェームズの妹アレクサはインターネットの画像投稿サイトで、ある光景を発見。それはジェームズが激しく殴られている模様だった。ストリートに詳しいミラーは、映像を録った場所が麻薬の温床であるボトム地区だと気づく。優等生がどうしてそんな場所に行ったのか。リリーたちはコールドケースの扉を開く。

ボトム地区を調べるとドラム缶から若い男の遺体が見つかる。それはジェームズだった。リリーとヴァレンズはジェームズが通った名門高校へ。ヴァレンズは生徒の1人、ルーカスから、ジェームズが行方不明になる直前、別人のように変わったと聞く。ジェームズが同級生タナーに挑発されてからだ。タナーは富豪レノックスの息子だが、《ファイトクラブ》にジェームズを誘っていた。そのクラブは、裕福な家庭に育ちながら日常に不満を抱えた少年たちが、本気で殴り合うことでスリルを求める集団だった。クラブのリーダーは同じ学校のコールだったが、コールは自分がジェームズを奮い立たせたことと、高校の校長が不正をして生徒を差別していたと証言する。高校の校長はそのことを認めつつ、それをジェームズの父ダリルに話していたと証言する。そしてジェームズの指の爪からダリルの皮膚が見つかる。ダリルによれば、ジェームズは自分に反抗していたという。だがその時にジェームズは携帯を壊しており、ジェームズの遺体のそばにあった携帯はルーカスが貸したものだった。ルーカスは事件当時、血にまみれたジェームズが“人を殺したのでもうおしまいだ”と話していたと証言。そしてコールが決定的な証言をする。ある夜タナーは興奮し、通りすがりの無関係な男性を殺してしまったという。その場に居合わせたジェームズは、タナーが警察に捕まるべきと考えた。
 犯人は息子タナーの事件を揉み消そうとしたレノックスだった。タナーが未来を失うのを恐れての犯行だった……。レノックスもタナーも逮捕される。
 ヴェラとトニは引き続いていい雰囲気。しかし同僚からは、そんなヴェラに冷静になれという声も。ヴェラは思い切ってトニをデートに誘うが……!?

【今回の深読み】
 映画「ファイト・クラブ」(後述)やチャック・パラニュークによるその原作小説を知っているかどうかで見る側の評価も大きく変わってきそうな、でも、そこがユニークともいえそうな今回の「コールドケース」。現実に“ファイト・クラブ”のような集団を成立させるのは難しいというのが結論だが、映画や原作のファンにとってはもう少しハードなクラブ活動(?)を見たかったし、“ファイト・クラブ思想”の真髄に近づいてもよかった気がするが、それはマニアックすぎる?
 展開を振り返ると、事件を揉み消そうとした富豪レノックスと息子タナーこそ、本来の“ファイト・クラブ”の攻撃目標そのもので、そこはきちんと押さえていた。当時はカリスマのように振舞ったタナーの今のへたれっぷりは実に皮肉めいている。

【ファイトクラブ】
 1999年の映画「ファイト・クラブ」がルーツと思われる。ブラッド・ピット、エドワード・ノートンが出演し、「セブン」の鬼才デヴィッド・フィンチャーが監督。カリスマ的な男性テイラー(ブラピ)は、現代人は殴り合いで生きる実感を取り戻せるといい、彼と知り合ったジャック(ノートン)はテイラーや仲間たちとファイト・クラブにのめり込んでいく……というお話。過激で滅多にない面白い映画。見てない人は何としても必見!

2008.9.27|エピソードガイド|コメント(2)トラックバック(0)

9月20日(土)S4#11「カントリー・シンガー」“The Red and the Blue”

11blog 【STORY】
 2000年11月13日。音楽界で成功する夢を胸に、南部のテネシーから北部のフィラデルフィアに、あるカントリー・バンドがやって来る。しかしバンドの1人であるトラック・シュガーは、フィラデルフィアのライブハウスの前で何者かに射殺されてしまう。
 そして現在。かつて事件を担当したのはジェフリーズの元相棒ギャレットだが、残業嫌いのギャレットは市警の嫌われ者。実はある事情を抱えるギャレットだが、カイリーという女性が夫の浮気にキレて撃った銃が、トラックを殺した銃と一致したとリリーたちのもとへ。“カウボーイたちを家に帰そう”と、リリーたちはコールドケースの扉を開く。

 カイリーはトラックがいたバンドが出演したライブハウスの経営者ミッチの妻で、犯人はミッチだという。彼女はトラックが殺された日、ミッチの銃を目撃していたが、カイリーは当時ミッチの愛人で、彼をかばうため銃を隠したという。ミッチはテネシーから来たトラックたちを田舎者扱いしてトラックを怒らせ、逆ギレしたミッチが犯行に及んだのだと推測。だが現在のミッチはそれを否定し、バンド内に問題があったと証言。メンバーのダスティは当時ドラッグに溺れ、バンドのアンプを質屋に入れた挙げ句トラックに金をせびったが、それを拒否されていた。
 殺人課では聞き込みのため、クジ引きの結果、リリーと共に、カントリー・ミュージックを毛嫌いするヴァレンズがテネシーへ出張することに。ダスティは事件当夜のアリバイを主張すると共に、タイとトラックの不仲を証言。また、トラックの妻ハニーは、トラックが人気女性歌手エディといい雰囲気だったのを見たと証言。ハニーはトラックと離婚するつもりだった。そしてエディは、彼女のマネージャーがトラックの才能を認めていたと振り返り、タイも弟トラックの独立を認めるつもりだったと証言。やがてある証拠から、ダスティに疑いの目が向く。
 トラックを撃った犯人はダスディだった。トラックはカントリーへの愛情を捨てられずに、エディと別れてハニーとよりを戻そうとしていたが、ダスティはドラッグを買う金ほしさにトラックを殺してしまったのだ。
 一方、ヴァレンズはテネシーのナッシュビル警察のシャーリーンと軽い気持ちでデートし、リリーはそれを知ってしまうが……!?

【今回の深読み】
 米国の国民的音楽、カントリー・ミュージックを題材にした意欲的エピソードが今回の「コールドケース」。しかし、流行とカントリーにはズレがあって……という背景が、事件をよりミステリアスにしている。
 さて、2000年というと、本編でもちらりとふれられていたが、共和党のブッシュ現大統領と民主党のA・ゴアが大統領選挙で争った年。そしてまたカントリーの世界では、ガース・ブルックスが大成功を収めるなど、ロックやラップとの融合を進んだ時代。そんな時代だからこそ、ピュアなカントリーを志向した事件の犠牲者トラックの純真さが際立つと同時に、カントリーと縁遠い日本人にはちょっと分かりにくいエピソードだったかもと認めざるを得ないのは筆者だけだろうか……。
 レギュラー陣で気になるのは、やはりヴァレンズ。でも、もしもこんな場面に遭遇したら、日本人なら会話そのものが成立しない気もしたが、リリーとヴァレンズの関係、今後はどうなるんでしょうか?

【ジョニー・キャッシュ】
 当番組のファンにとっては、全曲キャッシュの曲が使われた第2シーズンの第4話「ボス」も馴染み深い、カントリーやロックの伝説的歌手。伝記映画「ウォーク・ザ・ライン/君につづく道」はとてもいい映画だったと筆者は思います。

【ダスティ役のトラヴィス・ハワード】
 全米NBCで放送された、次世代のカントリー音楽のスターを発掘するリアリティ・ショー“Nashville Star”に出演した面々の1人。只のゲストのようで実は……という、米国人には意外な起用だったと思われる。

2008.9.20|エピソードガイド|コメント(4)トラックバック(0)

9月13日(土)S4#10「相棒」“Forever Blue”

10blog_2 【STORY】
 1968年7月7日。教会で赤ちゃんが洗礼を受ける式に青年クーパーが遅れてくるが、赤ちゃんの父親ジミーは気にならない。クーパーとジミーは相棒のパトロール警官同士で仲がいいのだ。しかし、やがてクーパーはパトカーで何者かに撃たれて命を落としてしまう。
 そして現在。ガンで余命僅かになった老受刑者が、釈放を交換条件に情報提供を申し出てくる。クーパーが殺された直後、遺体のそばにヘロインの塊があったという。長年英雄とされてきたクーパーに何があったのか。リリーたちはコールドケースの扉を開く。

 自身も警官だったクーパーの父ブローガンが、息子の名を汚す捜査は望まないと主張する一方、捜査陣は第1発見者のマーフィー元巡査に聴取。ヘロインはテディという売人が扱っていたが、テディはクーパーが不正に関わっていなかったといい、自分はクーパーの上司マクリーにワイロを払っていたと認める。マクリーはワイロを同僚たちにも分け、クーパーはそれを拒んだが、現在のジミーは自分もバークからワイロを受け取っていたと認める。そしてクーパーを彼が殺された橋の下に導いたのは警察無線の指令だったが、その夜はマクリーが担当していた。しかしマクリーはクーパーに女性問題があったと主張。そして後にジミーと離婚した元妻アイリーンは、クーパーがジミーと親密だったと認める。彼女はある夜、何とジミーとクーパーがキスするのを見た。再び疑われたマーフィーは、ジミーとクーパーの関係を心配し、ブローガンに相談したこと、そして警察無線の指令が実は自分だったと認める。リリーはジミーを事情聴取に呼ぶ。ジミーは両眼に涙を浮かべて、自分はクーパーを愛していたが、彼の思いに応えられなかったと告白する。
 犯人は、警官がゲイであることに我慢できなかったマクリーだった。ショットガンで撃たれ、死に瀕したクーパーは無線を手に取ってジミーに語りかけた、「俺たちは幸せ者だ。忘れるな」と……。

 一方、アンドレのバスケットボールを取り返そうと母親トニが警察に乗り込んでくる。初対面で大ゲンカしたヴェラとトニだが?

【今回の深読み】
 モノクロに一部だけ色をつけたスタイリッシュな映像は、最近ならカルトな映画「シン・シティ」を思い出すが、今回の「コールドケース」も“罪の町”だった頃のフィラデルフィアを舞台にしたエピソード。同性愛を描いたストーリーに佳作が多い当番組らしく、クーパーとジミーの許されぬ愛に切なさとやりきれなさがあふれ、感動的に幕を下ろす。
 さて、このエピソードの裏テーマだが、冒頭、教会の洗礼式で幕を開けるが、クーパーの“神父”という一言から、この教会がカソリックであることが分かる。米国の都会の警察にはアイルランド系の警官が多いといわれるが、これにはアイルランド系にカソリックが多く、また、カソリックが教会を重視する、いわば都市型教派であることと関係している。クーパーたちの上司の名前、マクリーのマクの部分もアイルランド系だからだろう。
 そして、カソリックは基本的に同性愛を否定する立場で、そんな環境の中でクーパーとジミーが愛し合うようになって生まれたのが今回の悲劇だ。米国では今年、カリフォルニア州で同性結婚が認められたが、ちょうど40年前の米国ではこんな悲劇があったかもしれないという着眼点に唸らされる。。
 さて、前回始まったヴェラとバスケ少年の問題だが、ヴェラと少年のお母さんトニの急接近に発展。今後が楽しみ!
 また、1968年の警察を知るスティルマンの当時の腐敗を否定する態度や台詞に、あらためて男らしさに感銘。当時は不正が当たり前だったという元警官たちへの毅然とした姿勢、クーパーの写真への献杯など、カッコいい!

【原題の“Forever Blue”】
 ある時期まで米東海岸の警察の制服に多かった青(Blue)の色と、暗い気持ちを意味する青をかけたタイトルだったと思えるが?

【監督のヤノット・シュウォーク】
 映画ファンにとっては「JAWS/ジョーズ2」「スーパーガール」など、ちょっとスベった娯楽大作で知られるが(でも「ある日どこかで」は泣かせる名作)、米ドラマ・ファン的には1960年代後半から「鬼警部アイアンサイド」「刑事コジャック」「刑事コロンボ」など多数の刑事ドラマで手堅い演出を見せてきた名職人。来年11月で70歳!

【バットマンとロビン】
 アメコミ・ヒーローのバットマン(の正体のブルース・ウェイン)は、ずっと独身だからか、相棒の少年ロビンとデキているという説は、以前はよく冗談にされたが、原作コミックではロビンが少女だった時期もあり、これは時代の古さを醸すための台詞なのでは?

【いつもの酒場の壁の写真】
 終盤、スティルマンとジェフリーズがいるおなじみののバーだが、クーパーの隣の遺影が第1シーズン第5話「ランナー」のジョー(1973年に亡くなった若い警官)だと、吹替版スタッフの1人が気づいたそうだ。さすが!

2008.9.13|エピソードガイド|コメント(3)トラックバック(0)

9月6日(土)S4#9「デート・サービス」“Lonely Hearts”

9blog 【STORY】
 1989年1月5日。ビデオカメラに向かって自己紹介する眼鏡をかけた丸顔の独身女性、マーサ。葬儀社で働き、男性との出会いを通じて人生を変えたいと望んでいる。そこは交際相手を紹介してくれるデート・サービスの一室。だが彼女は何者かに射殺されてしまう。
 そして現在。結婚詐欺師らしき男性ラモーンが拳銃自殺するが、彼は死の直前、マーサのビデオを見ていた。マーサとラモーンの関係とは何か。彼にとって彼女はカモだったのではないか。リリーは“彼は彼女のことを愛していたかもしれない”といい、コールドケースの扉を開く。

 マーサの当時のルームメイト、ステファニーは、彼女をデート・サービスに誘ったのは自分で、マーサのビデオに反応したのは唯一ラモーンだったが、ステファニーは彼に会わないよう助言した。そんなステファニーが警察に渡したマーサの遺品のほとんどはロマンス小説だが、中からマーサの日記が。実はマーサはラモーンと会い、初デートは大成功だったという。しかし日記は後ろの頁が無くなっていた。ラモーンは自宅と別に倉庫を借りていたが、そこから女性たちを収録したデート・サービス用ビデオが19本見つかる。何とそのうち5人は1989年にひき逃げ事故で亡くなっていた。事故に遭わなかった1人、ユージニアは、ラモーンに全財産をまき上げられ、生前のマーサに警告したと証言。マーサがラモーンと会った事実を隠した可能性があるステファニーが事情聴取に呼ばれるが、嘘をついた理由は、ラモーンに捨てられそうになったマーサが、彼に犯罪を持ちかけたからだという。マーサとラモーンは兄妹になりすまし、ラモーンが目を付けた女性と結婚してはマーサが彼女たちを車でひき殺していたようだ。そんなマーサはある小説の登場人物、セリーナを偽名にしていたが、マーサはセリーナ名義でラモーンに生命保険をかける一方、セリーナ名義で銀行に貸金庫を持っていた。その貸金庫から日記の後半が見つかる。いつしかマーサはひき逃げに罪悪感を覚え、犯行をやめようと彼に提案したが、その途端ラモーンはマーサにプロポーズ。だがマーサは自分が殺されると思い、ユージニアに相談していた。
 マーサを殺したのはユージニアだった。まだラモーンを愛していたユージニアは、マーサを裏切って彼女を殺したのだった。しかしラモーンは真剣にマーサを愛するようになっていて、現在、自殺を遂げたのだった。

 その頃、モーテル暮らしに飽きたヴェラはアパートの地下室に引っ越していたが、アフリカ系の少年アンドレがバスケの練習していて、安眠を妨害されたことに怒るが……。

【今回の深読み】
 愛ゆえに常識で測れない行動に走った人々を描く、少々ダークなエピソード。ラモーンと出会い、自分が大好きなロマンス小説のヒロインになったかのように誤解したマーサ。そして結婚詐欺師なのに本気でマーサを愛してしまったラモーン。そして誰からも愛されなかったユージニア。米国に限らず、たとえば日本でも起きたとしてもおかしくない三角関係の悲劇が、「コールドケース」らしい語り口で描かれた。
 1989年といえば、翌年にハリウッドで「ゴースト/ニューヨークの幻」「プリティ・ウーマン」がヒットし、日本では88年に村上春樹の小説「ノルウェイの森」がベストセラーとなり、91年にはTV「101回目のプロポーズ」がヒットするなど、何かと“純愛”がもてはやされた時代。しかし純愛の定義が今も曖昧なように、ブームの熱が先行した時代だったように思える。そして今回のマーサも、そんな熱に道を誤らされた1人だ。彼女が車で女性をひき殺す場面に、“えっ!”と驚いた人もいるだろうが、愛の狂気をブラックユーモアで味付けすることでバランスを取ろうとした演出だと思ったが、どうだろう。
 さて、細かい見どころでは、ヴェラが引っ越し先で出会った少年アンドレと、ヴェラの関係。ついバスケのボールを蹴り飛ばしたヴェラだが悪気も感じているようで、今後アンドレとどんな関係になるか、気になる!

【今回の音楽のアーティストたち】
 Roxetteは前出の映画「プリティ・ウーマン」のサントラの1曲“It Must Have Been Love”も手がけ、Eric Carmenの“Hungry Eyes”も映画「ダーティ・ダンシング」のサントラの1曲。“Love Shack”のThe B-52'sはプレスリーをカバーした“Can't Help Falling in Love”も1993年に大ヒットと、この時代に流行ったアーティストの代表曲がガンガン流れたので、思わず当時を思い出したという人も多いのでは?

2008.9. 6|エピソードガイド|コメント(1)トラックバック(0)


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