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池田敏
アメリカTV・映画ライター。映画誌「キネマ旬報」「SCREEN」やTV誌「TV TARO」に寄稿。最近40歳になりました。


11月29日(土)S4#21「蓄音機」“Torn”

211blog 【STORY】
 1919年6月9日。クラシカルな街並みを親しい人々と歩く若い女性フランシスは、父親アンブローズから“じゃじゃ馬”と罵られて立腹。しかし女性の参政権を主張する女性たちに目がとまり、心がときめく。そんなフランシスだがしばらくして命を落としてしまう。
 そして現在。ペンシルベニア大学で女性学を学ぶ学生エマがリリーを訪ねてくる。祖母のおばフランシスは1919年に何者かに殺されたが、祖母の形見のロケットの中から、フランシスがフィリッパという人物に宛てた手紙を見つけたという。フランシスは婚約者ローレンスに浮気を知られたのか。リリーは、今まで取り組んできた事件で最も古いコールドケースの扉を開く。

 フランシスは6月23日、自宅の2階から転落死していたが、当時の新聞記事の写真の片隅にいるメイドがフィリッパで、その目元には殴られた跡が。どうやらフランシスは結婚して家庭に縛りつけられるのを嫌い、自由に生きることを望んでいた。現在、フィリッパの娘オードリーが殺人課に呼ばれるが、オードリーはランブローズの家が禁酒法の影響で破産したと振り返りつつ、母とフランシスは確かに仲が良かったが性的関係でなかったこと、フランシスがフィリッパを女性参政権論者の集会に誘ったことを思い出す。生前のフランシスの日記からは、彼女とフィリッパが初めて集会に行った日、母親エリザベスが乗り込んできてフランシスを強引に連れ帰ったことがわかる。リリーたちは、運動の指導者アリスがフランシスをスパイと誤解して殺した可能性を疑うが、生前のアリスに会ったことがある大学教授は、アリスとフランシスは意気投合していたと語る。ヴァレンズは当時の警察の記録から、警察に拘留されたフランシスに婚約者ローレンスと父親アンブローズが面会に来たと知り、フィリッパがアンブローズに運動のことを密告していたこと、友人に裏切られたフランシスが父親の説得に折れて帰宅したことを推測。再び現在のオードリーは、母が暴力的な夫に脅され、夫に娘を奪われないよう仕方なく密告したこと、そしてフランシスが留置場のアリスを救おうと決意していたことを振り返る。やがてエマの家から、エリザベスが録音したレコードが見つかる。蓄音機の上で回り出したそれは、長い時を越える意外な告白だった。
 犯人はエリザベスだった。保守的なエリザベスは自分の言うことを聞かない娘と揉み合ううち、娘は2階から転落したのだった。

 一方、リリーは何か問題を起こして留置場に入れられた母親エレンを引き取りに行く。エレンは恋人のジャッキーに捨てられたと嘆き、再びアルコールに溺れていた……。

【今回の深読み】
 セピア色で始まり、セピア色で幕を下ろした今回の「コールドケース」。1本のドラマで2つの時代を描く当番組の真骨頂を思わせる力作だった。
 虐げられた女性たちの歴史が1つのテーマである当番組だけに、女性の参政権が認められる前の時代というのは気合が入った題材に違いない。ちなみに日本で女性参政権が認められたのは1945年だった。
 さて今回、勉強不足の筆者にとって面白かったのは、女性参政権を求めた女性たちは禁酒法にも賛成していたという歴史的事実。これはフランシスの父親アンブローズが犯人かもしれないという可能性を示唆して緊迫感を維持するが、禁酒法と聞いて即、TVや映画の「アンタッチャブル」のような世界しか思い浮かばなかった筆者には目からウロコ。調べると当時、男性の泥酔に批判的な女性たちと女性参政権を望んだ女性たちは重なっていたんだとか。それは考えたことがなかった。
 また劇中、大学教授が“手に入れるのが大変だった参政権なのに、今は大切にされていない”とこぼすが、この人、米国の民主党なのかも。先日、民主党のオバマ候補が次の大統領に決まったが、選挙権がありながら今まで大統領選に投票しない層が動いての勝利という声もある。
 レギュラーの刑事陣では、久しぶりに母親エレンが登場したリリーが主人公の回となった。“コールドケースじゃなくてアイスケースだな”というヴェラに、“アイスピックを出さなきゃ”といって捜査に入るあたりは颯爽としていたが、終盤でエレンが再び酒を口にしてしまう(前出の禁酒法と対になっている!)カットはショッキング。お母さん、あまりリリーをいじめないで……。
 次回は俳優アンディ・ガルシア(おっ、映画版「アンタッチャブル」が出世作なのは奇妙な偶然!?)が監督した話題のエピソード「コンテナ」がついに登場。お楽しみに!

【メアリー・ピックフォード】
 今回の背景となった1910年代、映画がまだサイレントだった頃のスーパースター。当時は“アメリカの恋人”と呼ばれたほどの人気者で、エリザベスがファンだというのは、いかに彼女が保守的かを示す巧い引用。そんなピックフォードだが、後に人気男優ダグラス・フェアバンクスと結婚するも離婚し、実業家に転じて活躍するという、エリザベスよりはフランシスやアリスに近い女性だったのが皮肉。さりげないようで練った人選だ。

【現在のオードリー役のエレン・アルバーティーニ・ドウ】
 1918年生まれで、何と今回の事件が起きた頃から生きていらっしゃる! しかもこの女優さん、約30年も演技やダンスの先生をした後、70歳近くでデビュー。今回は88歳の時に出演し、今後も映画など4本に出演予定。超遅咲きの実力派として長生きしてください!

2008.11.29|エピソードガイド|コメント(0)トラックバック(0)

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