1963年9月16日。グレースフェリー高校のある教室で、後方に座る男子生徒サムに女生徒たちからメモが回ってくる。不良のレッドがそれを取り上げ、“君は童貞?”と読みあげると、サムは激怒。逆ギレしたレッドはサムの胸ぐらをつかむが、サムには女性のような胸のふくらみがあり、教室は驚きに包まれる。やがて赤いドレスを着たサムの遺体がFDR公園の湖畔で見つかるが、警察は自殺と結論を下す……。
そして現在、アルコール中毒の男性が殺人課に来て、サムは殺されたと主張。サムが飛び降り自殺したと思われる橋にいた彼は、サムが流れていく直前、橋に1台の車が停まったという。当時の鑑識結果によれば、サムの肺に水は無く、殺された後、湖に投げ捨てられた可能性が高い。リリーたちはコールドケースの扉を開く。
16歳のサムは、本当はサマンサ・ランドールという少女だった。殺される2か月前に高校に編入してきたサムは、男子のような格好をして奇異に見られ、家出歴や補導歴もあったことから自殺と判断されたらしい。遺体のこめかみには打撲か火傷のような痕が。サムは父親アーチーは現在、トラブルメーカーだったサムが転校を繰り返したせいで経済的に困窮していたと証言し、サムがドムという男子生徒にからかわれていたと思い出す。しかし現在のドムは、友人がいない自分とサムは意気投合し、2人は不良のレッドを相手にしたドラッグレースで勝ち、レッドを怒らせたと証言。しかし現在のレッドは家庭科の教室でサムが女生徒のジェイニーに恥をかかせる事件があったと振り返る。しかし現在のジェイニーは当時、サムとドムが2人でいる光景を目撃したといい、ドムに好意を抱いたサムが彼にキスを迫り、断られていたと証言。そしてドムは、サムがレッドら不良たちにレイプされかかった時、校長が止めに入るまで、自分が助けられなかったこと、サムが高校を退学させられたことを語る。娘が退学したことをなぜか隠していたアーチーだが、実は娘を精神療養施設に入院させていたことを後悔していたからだった。そこで働いていた医師はすでに他界していたが、サムが脱走した直後に施設をやめた看護師は、サムが電気ショック療法を受けさせられたこと、彼女に同情してドムを施設に呼んだことを証言する。
犯人はドムだった。看護師の導きで病室に侵入したドムだが、すでにサムは廃人のようになっていた。ドムはサムと湖畔で“死んでも自由でいよう”と誓い合っていたが、ベッドの上で“自由にして”というサムの頼みを聞き入れ、サムを殺したのだった……。
一方、殺人課では内務監査の結果、ヴァレンズを30日間停職させるよう勧告を受けるが、スティルマンはこれを拒否。その結果、スティルマン自身が停職処分を受けることに!
【今回の“深読み”】
見終わった後しばらく、やるせない、という言葉しか思い浮かばなかった今回の「コールドケース」。性同一性障害がまだ今ほど認められていなかった時代、差別され、人権、そして生命まで奪われた少女の悲劇だ。時代や社会の価値観に押しつぶされていった人々(特に女性)を描くことが多い当番組らしい、今回も考えさせられるエピソードだった。
時代は1963年、今回の各BGMのように、音楽界では陽気で甘いオールディーズが流行したが、現実世界はハードだった(そのあたりのコントラストが巧い)。公民権法が制定される1964年の前年で、アフリカ系などのマイノリティが公民権を求める運動を展開していた頃だが、裏を返せば差別がまだ当たり前だった時代ということ。しかも現在でさえ定義付けに諸説ある性同一性障害となると、当時はサムのように周囲から偏見を持たれ、差別されたにちがいない。現在もそうだが性同一性障害は同性愛と誤解されることが多く、キリスト教が同性愛を認めないというのも背景にはあっただろう。
今回思い出したのは、実話を背景にした映画「ボーイズ・ドント・クライ」(1999)。ヒラリー・スワンクが性同一性障害の主人公ブランドンを熱演してアカデミー主演女優賞に輝いた話題作だが、ブランドンは同性愛者でもあった点、時代が1990年代だった点が今回の「コールドケース」とは異なる。但し、原語で聞くと、不良生徒の1人がサムに“Boys Don't Cry.”と言っている部分があり、やはり何かしら影響はあったと思う。
重要なのはこの時代、サムのような性同一性障害だけでなく、誰もが差別に遭う危険性があったことで、その傷も深く大きかった。ラスト、逮捕されたドムはサムの幻影を見たが、サムの表情には友情や愛情だけでない、冷たい感情もあった気がする。
レギュラー陣に目を向けると、何よりスティルマンに意外な展開が。ヴァレンズを守ろうと内務監査や上層部に抵抗した結果だが、早く無事に復帰してほしいもの。とはいえ、スティルマンがジェフリーズを呼んで“後は任せる”と頼んだ時の2人の雰囲気は、男らしくてシブくてカッコよかった。それにしてもヴァレンズはこの機に成長しないと……。
【FDR公園】
フィラデルフィアのそば、デラウェア川に近い公園で、FDRは第31代大統領、フランクリン・デラノ・ルーズヴェルト(Franklin Delano Roosevelt)のこと。
【今回の「Behind the Scenes/100th anniversary Special」】
第100話を記念して本国で行われたパーティーの模様をお届けするスペシャル・ミニ番組「Behind the Scenes/100th anniversary Special」が第100~103話(「コールドケース5」第7~10話)の放送直後にオンエア中。今回は、リリー役のキャスリン・モリス、キャット役のトレイシー・トムズのインタビューが見られます。番組のスペシャルサイトでネット配信もされるのでお楽しみに。
2009.9. 6|エピソードガイド|固定リンク|コメント(1)|トラックバック(0)
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いつも楽しみに拝読しております。
ブランドンは同性愛者ではなかったと思います。
というのは、ブランドンは性同一性障害で、心は男だからです。
性自認が男のブランドンが男として女を愛していたのだから、ブランドンは異性愛者ということになるのでは…?
その点、ドムがあそこまでサムを拒否した理由は、サムの性自認は男なのに、同じ男であるドムにキスしたことでドムがゲイ(同性愛者)とのそしりを受けることを嫌悪したから…といえると思います。
本当は、別にどちらでもいいと思うんですけどね。
男と女、どちらか一方に必ず属さないといけないとか、同性愛なのか異性愛なのか、どちらかに決めないといけない、とか…
リリーも最後に云ってましたね。
「男とか女とか、ただの言葉だ」って。
個々人は言葉では分類しきれない、
それぞれ固有の性を持った掛け替えの無い存在だ、ということで。
そういう人と人同士が「愛し合う」というのは、尊いことだと思います。
投稿: シカ | 2009年9月 6日 (日) 02時27分