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池田敏
アメリカTV・映画ライター。映画誌「キネマ旬報」「SCREEN」やTV誌「TV TARO」に寄稿。最近40歳になりました。


10月24日(土)S5#16「チャンス」“Bad Reputation”

161 1997年9月7日。フラックヴィル刑務所の一角。強盗罪で12年間も服役してきた男、ピート・ドイルが出所する日だ。他の受刑者たちにピートは、今後は改心して悪の道から足を洗うと誓うが、きっかけは彼に届いた息子ピーティからの手紙だという。ピートは出所したらすぐに愛する息子を訪ねたいと望みを語る。だが、ピートは何者かに殺される。そのそばには44口径リボルバーの拳銃……。ピートの死を知る者は犯人だけなのか。
そして現在。麻薬課のガサ入れの現場に呼び出されるリリーたち。ドラッグの売人の部屋の冷蔵庫から、切断されたピートの右手が発見されたという。売人は10年前、路上に倒れていたピートの遺体から右手と拳銃を盗み、ピートの指紋を売って金にしていた。ピートは改心しなかったのか、それとも……。リリーたちはコールドケースの扉を開く。
逮捕される前のピートはノースフィリーの町で《ピストル・ピート》のあだ名で呼ばれ、“現代のジェシー・ジェームズ”ともいうべき市民の味方だった。しかしピートの当時の妻で、今はバーニーという男性と再婚したジュールズは、出所から1時間後、ピーティに会いに来たピートを追い返したと語る。また、当時のピートの相棒だったトミーは、再びピートを犯罪に誘っても拒絶されたと振り返り、本気で更生しようと決めたピートは懸命に堅気の仕事を探していたという。そして現在のピーティは、出所後のピートとあと1回しか会っていないと語る。バーの掃除の仕事にありついたピートを訪ねたピーティは、そこでピートを面白く思わない警官のダニエルにピートが挑発されながら、それに耐えたと語る。警察を引退した現在のダニエルはピートを憎んでいたと認めるが、トミーが大きなヤマを計画していたことを明かす。

トミーはジェフリーズから執拗な尋問を受け、弁護士の立会いを要求。リリーはそんなトミーから、ピートが結局その計画に加わったこと、その計画を練ったのが実はピーティだったことを聞き出す。かつて学校に拳銃を持ち込んだ前歴が見つかったピーティは再び警察に呼び出され、やはり父親が自分にとって英雄だったこと、しかし犯行当日、父親に諭されて計画に加わらなかったを語り、ピートたちが襲う予定だった現金輸送車を運転していたのが、現在の父親バーニーだったことも告白する。現在のバーニーはピーティを気づかいつつ、輸送車がピートとトミーに襲われたことを認めるが、ピートの態度は紳士的で、彼に警察への通報を勧められたと明かす。その際にピートは何回も“大当たりだ”と口走っていた。元麻薬課のミラーによれば“大当たり”は潜入警官が使う合言葉だった。
犯人はダニエルだった。カネを目当てにトミーたちの計画に加わったダニエルだが、犯行中にピートが警察への通報を促したと知ると、今までの恨みもあってピートを44口径で射殺したのだ。事件解決と同じ頃、ピーティはジュールズのもとを訪ね、ピートが刑務所から自分に送ったのに今まで彼女が隠していた手紙の1通1通に目を通しだしていた……。

【今回の“深読み”】
犯罪者の道から足を洗おうと決めた男と、犯罪者としての父親を英雄だと崇めた息子。2人の意識の“ずれ”が悲劇を生んだ、今回の「コールドケース」。具体的な社会問題を背景にすることが多いドラマだが、今回はよりシンプルかつ普遍的に、人が進みたいと望む道と周囲から期待される道との間にギャップがあることの矛盾をダイレクトに描いた、エモーショナルなエピソードに仕上がっていたと思う。
振り返ると今回、それぞれのキャラクターが“ずれ”に悩んでいた。ピートを筆頭に、いい子になるよう望まれながら父親のような“英雄”になりたいと望んだピーティ、出所した相棒ピートが善人に生まれ変わりたいと望んで戸惑ったトミー、市民に尽くしたいと望み、犯罪者を取り締まりながら現実には借金に苦しんでいたダニエル。ピーティの親なのに、彼が元父親を崇拝していたジュールズやバーニーにも同じ苦悩はあっただろう。
中でもピートは、ある意味で殉教者のようであった。クライマックスの回想シーン、ダニエルに拳銃を突きつけられたピートがひざまずく姿勢が、神に祈る者のように見えたのは筆者だけだろうか。善人に生まれ変わったというピートだが、しかし、それまで犯罪を繰り返してきた彼は、自分が思っている以上に罪を背負っていたに違いない。その贖罪の方法は唯一つ、自分の命を投げ出すこと。そしてピートはそれを実行した。
哀しい現実だが、1つだけ希望を残した。それはピートがピーティに送りながら、これまで隠されてきた手紙の数々。そこに何が書かれていたかを知ることは、TVの前の我々に知ることは出来ない。しかし、だからこそ大きな余韻を残す。社会の中で生きることはけっして綺麗ごとだけでは済まされない。どうすれば“ずれ”を無くすことができるのか。その答はおぼろげに、しかし確かに、1人1人の心の中に秘められているはずだ。

【キャグニー】
1980年代、エミー賞のドラマ・シリーズ作品賞に2度も輝いた傑作TVドラマ「女刑事キャグニー&レイシー」の主人公は女性刑事のコンビ。キャグニーは独身のブロンド女性のほうの名字。

【セルピコ】
1973年の映画「セルピコ」で有名になった実在の麻薬課刑事、フランク・セルピコのこと。ニューヨーク市警の汚職を内部から告発したことで知られる。ここでは署内でのはみ出し者として、リリーはサッカードをこう呼んだようだ。

【サッカルド役のボビー・カナヴェイル】
麻薬課のオフビートな刑事だが現場経験が豊かで記憶力にも優れ、リリーにも関心がありそうなサッカルド。ここだけの話、これからも登場する要注目キャラ。演じるカナヴェイルは、かつてWOWOWが放送したドラマ「サード・ウォッチ」で救命士ボビーを演じたカナヴェイル。どんなイメージチェンジを見せてくれるのか、今後もご期待を。

【ピート役のジョン・パイパー=ファーガソン】
ピート役を存在感たっぷりに演じた1964年オーストラリア生まれの俳優。色々なドラマにゲスト出演しているが、最近では「ブラザーズ&シスターズ」でジョー・ウェドンを演じている。

2009.10.25|エピソードガイド|コメント(1)トラックバック(0)

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コメント

刑期を終えて出所した人をいつまでも、同じ犯罪者にしようとする人は昔の仲間だけではないなんて。警察官が?!って、言う感じ。更正をしようとしている人の足を引っ張るなんて、最低最悪じゃん!しかも、自分は手を汚さないなんて、ずいぶんと身勝手だこと。無事に、定年退職をしてただなんて!あんた勝手が過ぎる!
私って、ちょっと、感情入り過ぎかしら?
ピートの悪友達をしてた俳優さんって、CSIラスベガスに刑事役で、出てたような…違ってましたっけ?

投稿: マック娘 | 2009年10月25日 (日) 22時42分

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