2005年2月12日。ベーカー通りのアパート。必死に火事を消そうとする消防士たち。住人のプリシラは、4階にいる自分の赤ちゃんを助けてほしいと消防士の1人に懇願。だが建物から戻った別の消防士は、絶望的な表情を見せる。プリシラの生後8か月の息子マックスは事故死したと扱われる。
そして現在。麻薬課のサッカルド刑事に呼び出されたリリーは、ヘロイン常習者だというプリシラと留置場で対面。何とプリシラは、公園でマックスを見かけたという。
生前にケンカした母親を思い出したリリーはプリシラを相手にしない気だったが、何かが引っかかってコールドケースの扉を開く。
火事は、貧しいプリシラが暖房代わりに付けていたガスコンロが原因とされたが、火元は別室だった可能性が浮上し、放火の線で捜査が進む。火事のため、巨額の保険金を受け取ったアパートの経営者ヴィクターは当時、麻薬を絶っていたはずのプリシラがドラッグの大物ディーラー、フランクリンと会っていたと証言。しかし火事の頃、逮捕されていてアリバイがあるフランクリンはプリシラがマックスの父親である麻薬中毒者、エリスに詰め寄っていたことを振り返る。エリスが行っていたリハビリセンターのカウンセラー、ロイスは、金に困ったプリシラがエリスに生活費を求めていたと思い出す。マックスの遺体から骨折の跡が見つかり、プリシラによる虐待説が浮かんだ頃、釈放されたプリシラは行方知らずに。
リリーたちはプリシラの家で何枚もの小切手を発見するが、どれも換金していないことを知る。小切手を送ったのはプリシラの母親だったが、娘にマックスを養子に出すよう説得して断られたと振り返る。やっと見つかったエリスは、火事の頃プリシラが子供のために麻薬から足を洗ったと証言し、彼女が花市場にいると推測する。マックスの遺体から重大な事実が分かる。遺体は生後4か月で、マックスではない赤ん坊だった。殺人ではなく誘拐なのか。リリーたちに発見されたプリシラは取り調べに対し、なかなか麻薬を止められず、貧乏から抜け出せなかった自分はアパートのヒーターが故障したため、暖かい花市場で過ごすのが唯一の気休めだったと証言。放火はプリシラが花市場に出かけた間になされていたが、それを知るエリスもアリバイがあって犯人である可能性はない。しかし、もしもエリスが誰かに話したとしたら……。
犯人は、ロイスと医師であるその夫トムだった。子供を持ちたいと願いながら子宝に恵まれない夫妻は、麻薬中毒者が親になって育児放棄したり、子供を虐待することに憤りを覚え、トムの病院にあった被虐待児の遺体をマックスとすり替え、子供部屋に火を放っていた。ロイスとトムに育てられていたマックスはリリーに見送られ、久しぶりに本当の母親に抱きしめられる……。
【今回の“深読み”】
いよいよ今シーズンの最終回。ラストは、亡くなったと思われていたマックスが母親プリシラと再会する、ほっとひと安心の場面。リリーが撃たれた前シーズンのラストと対照的なのが面白いともいえる。
さて、今回は“ドラッグ”を題材にした社会派風のエピソード。2009年、日本の芸能界でもドラッグ汚染が問題になっているが、今回の犯人夫婦に少しだけ同情しそうになったのは、ドラッグに手を染めた者の子供はどうすればいいのかということ。まだ幼い子供に罪はないが、麻薬常習者に子育てができるのかどうか。プリシラは何度も麻薬を止めようとし、その度に失敗してきた(麻薬は恐ろしい)。冬は寒いフィラデルフィア(映画「ロッキー」シリーズが思い出される)で、暖さえ取れぬ貧困にあえいでいたプリシラ(対になるよう花市場を幻想のように描いた演出が巧い)。息子と再会した今後こそ立ち直ってほしいと願いたいが、現実には裕福なロイスとトムに育てられていたマックスがこれからプリシラとどう新生活に取り組むか、正直いって少々心配でもある。最後の母子の再会シーン、途中に登場したプリシラの両親もいたほうが安心できたと筆者は思ったが、どうか。それと、ヒーターを直さなかったアパート経営者ヴィクターに天誅を!
あと「コールドケース」らしかったのは、リリーの心情を掘り下げたこと。前シーズンで亡くなった母親に対し、リリーは愛情と憎しみの両方をまだ抱いているようだ。
そして今回、社会復帰しようと悪戦苦闘するプリシラに、憤りと同情の両方を感じたに違いない。“もしも自分が母親だったらどうするか”、そんな考えが頭に浮かんだとしたら、リリーもそろそろ結婚を意識するのか、それとも引き続いて自由に生きるのか。軽い印象で実はデキる男に思えてきたサッカルド刑事との関係共々、次シーズンのリリーが気になる!
さて、これにて「コールドケースブログ」第5シーズンは終了(今までよりエピソード数が少なかったのは全米脚本家組合ストの影響)。個人的には現時点で、番組史上2番目か3番目位に好きなシーズンでしたが、みなさんはどうですか。5か月の間のご愛読、どうもありがとうございました。第6シーズンでまたお会いできることをお祈りしつつ……お元気で。
【今回のモデル!?】
調べたら、今回の事件と似た実話が米国にあった。しかも「コールドケース」の舞台と同じフィラデルフィアで。1997年冬、ある家で火事が起き、ルス・クエバスという女性の娘の赤ちゃん、デリマーが命を落とした。デリマーの遺体は高熱で燃え尽きたと考えられるが、クエバスはデリマーの部屋の窓がなぜか開いていたのが気になった。それから数年後、クエバスはあるパーティでデリマーに似た少女を見かけてびっくり。こっそり髪の毛を数本抜いてDNA鑑定に出すと、何とデリマーと一致! フィラデルフィア市警はクエバスの友人だった女性、キャロライン・コレアを放火・誘拐の罪で逮捕した。しかし、クエバスとデリマーがいきなり再会するのは難しいと考えられ、実現までには時間がかかったという。
2009.11. 8|エピソードガイド|固定リンク|コメント(2)|トラックバック(0)
1962年9月16日。夜に自宅の窓際でタイプライターを打つ女性ナンシーは、屋根裏部屋から聞こえる不気味な音が気がかり。そこに現れた夫ダニエル(ダン)や幼い娘レイチェルのおかげで幸福な気持ちを取り戻すが、まだ音が気になる。直後、屋根裏部屋でナンシーがロープで首を吊っているのが見つかり、警察は自殺として処理する。
そして現在。ナンシーの孫リズが殺人課を訪ね、祖母が自殺した家から祖母の遺書が見つかったが、筆跡が祖母と異なると主張。リリーたちはコールドケースの扉を開く。
ナンシーの夫ダニエルは大学教授であり詩人だったが、妻が亡くなった夜、仕事で家にいなかったこと、そして娘のレイチェルが遺体の第一発見者だったこと、ナンシーが最初の夫を交通事故で失い、ダニエルと再婚していたことが分かる。現在のレイチェルは母の死を思い出したくないようだが、母とかくれんぼをした日、屋根裏部屋に行って母に怒られたこと、屋根裏部屋に閉じ込められたことを振り返るが、誰かに閉じ込められたようではなかったと証言。現在のダニエルは、家政婦のアネットが家や屋根裏部屋の鍵を持っていたと語るが、現在のアネットはナンシーが音だけでなく風までも怪しんでいたこと、タイプライターにドラモンドという人物がメッセージを残していたこと、同じ頃、家の前に茶色のステーションワゴンが停まっていたことを思い出す。ステーションワゴンや当時の記録の線から、ダニエルの教え子ブルースの存在が浮上する。だが現在のブルースは、同性愛者の自分はナンシーでなくダニエルに関心があったこと、ある夜にナンシーが屋根裏部屋で首吊り用のロープを見つけていたことを思い出す。
警察に呼ばれたダニエルは、ナンシーがロープの注文書を持っていながら、なせか身に覚えがないと言っていたと証言。一方、ロープを売った店でヴァレンズが当時の主人の孫から話を聞くと、ナンシーがロープを買った時、“ドラモンド”と書かれたペンを持っていたと分かる。ドラモンドとは、心の病を持った患者を収容する病院で、当時の看護師長はナンシーが、自分が何者かに付きまとわれていると言いに来たこと、彼女の母が事故死したのではなく、遺書を残して病院の物置で首吊り自殺したとナンシーに明かしたことを語る。意外な事実が判明する。ナンシーの母親のカルテに偽のサインをした人物と、ロープを注文した人物、いずれも筆跡はアネットだった。現在のアネットは、すべてに恵まれていたナンシーに嫉妬し、彼女を家から追い出したかったことを認めつつ、レイチェルを屋根裏部屋のトランクに閉じ込めたのは自分でないと主張。ヴァレンズはかつて自殺した恋人エリッサのことを思い出して捜査にのめり込んでいたが、冷静になってレイチェルを訪ねる。レイチェルは自分が母親にプレゼントしたお絵描きの紙をまだ持っているという。
犯人はダニエルだった。レイチェルは、自分がお絵描きした紙がダニエルのデスクにあったというが、その表にはナンシーが自作の詩をタイプしていた。当時、詩が書けずに悩んだダニエルはナンシーの詩を盗作したが、その事実を隠そうとアネットに手伝わせて、ナンシーの心が病んでいるかのように偽装。それがナンシーにバレたため、ナンシーの首を絞め、ロープに吊るしたのだった……。
さて、ジェフリーズはブルースの家のセクシーな家政婦ベルを気に入ったようだが……!?
【今回の“深読み”】
今回の「コールドケース」も重くて苦いエピソードだったが、ホラーっぽく演出されているのがこの番組としては意外と斬新で、フレッシュに思ったのは筆者だけだろうか。
ある登場人物の心が病んでいるのではないかと周囲が偽装するプロット自体、よくも悪くもサスペンス的に定番で、それを「コールドケース」風に描いたのが今回は楽しかった。単独犯による犯行でなく共犯者がいたのも、ミステリー好きには楽しめたと思える。
但しこのエピソード、心を病んだ者の子孫も心を病みがちという歪んだ視点の上に終始立脚しているようで、筆者としてはいかがかと思った。そういう視点を差別と見なし、抗議して弾劾していくのが「コールドケース」というドラマだと思うのだが……。
もっとも、レギュラー・キャラに目を向けると、いつもは渋いジェフリーズが聞き込み先で知り合ったセクシーな家政婦ベルに、いきなりハートをわしづかみにされたのが意外で、そこは面白かった。何なんですか、パイとかミルクとか(爆)。それを見つめるヴェラの目が、思わず点になっていると感じたのは筆者だけだろうか。
それと、暴走しがちなヴァレンズが、やはり過去の恋人エリッサのことをまだ忘れられずにいるというのは、「コールドケース」をずっと見ているファンなら、ちょっと同情してしまったのではないか。一連の暴走の原因がそうだとしても、彼には早く幸せになってほしいと願うばかりだ。
【シンディ・ローパー】
1980年代から現在まで活躍を続ける米国の女性歌手。「ガールズ・ジャスト・ワナ・ハヴ・ファン」(旧題「ハイスクールはダンステリア」=笑)、「タイム・アフター・タイム」、「グーニーズはグッド・イナフ」などの曲がヒット。どんな風貌か、ネットで画像を探せば、ヴァレンズがそう呼んだことに頷けるはず(但し最近の風貌は大人しめ)。
【カッコーの巣】
心の病を持つ人々を描いた小説および映画「カッコーの巣の上で」でも知られる通り、そういう人々を収容した施設を示す。
【ラストの曲“The End of The World”】
この曲、今シーズンの第9話「ドレス」で、サムがレッドたちに取り囲まれ、いじめられるシーンでも流れていました。同じ曲が、しかも同じシーズンで使われるのは珍しい!?
【ナンシー役のエミリー・ローズ】
TV「ブラザーズ&シスターズ」第2シーズンではリナを演じた。「ER 緊急救命室」第15シーズンにも準レギュラー出演している。余談だがこのエミリー・ローズという名前がホラーっぽい今回に、妙に合っていたと思うのは筆者だけ?
【現在のダニエル役のロニー・コックス】
米国の映画・TV界の名バイ・プレイヤー。「ビバリーヒルズ・コップ」「ロボコップ」「トータル・リコール」などの大ヒット映画に出演。
【現在のレイチェル役のフランシス・フィッシャー】
英国出身で、ブロードウェイを経てハリウッドに渡り、「許されざる者」「タイタニック」「砂と霧の家」「告発のとき」などの映画に出演。クリント・イーストウッドの娘、フランチェスカ・フィッシャー=イーストウッドの母親でもある。
【リズ役のブレア・グラント】
その後、人気ドラマ「HEROES/ヒーローズ」の第3シーズンで、猛スピードで走る新キャラ、ダフニを演じているが、やはり髪形はシンディ・ローパー風(笑)。
2009.11. 1|エピソードガイド|固定リンク|コメント(4)|トラックバック(0)